わたしたちは、
建物には、住む人の心が表現されてほしいと思っています。
また、建物や庭には、その心持ちを世代を超えて伝えていくような可能性があると思います。
温まりにくいけれども、一度温まると冷め難い物質のことを「熱容量が大きい」と表現しますが、
建物は、人の心持ちを世代を超えてつなげていくという意味で、「心の熱容量」が大きい建物こそが、豊かなコミュニティや魅力的な街を生むと考えています。
そのためには、建物は、デニムのパンツのように気兼ねなく使えて、美しく経年変化していけること、また、高寿命であることがとても大切に思われます。
わたしたちは、衣服でいうデニムのようなあり方の素材を、建築においても使っていきたいと考えています。
焼杉板
化学薬品で処理したものではなく、三角形の筒状に固定した上で実際に焼かれたもの。
5mm以上の炭化層の厚みがあり、長い時間の中で美しく経年変化していきます。
一説によると外壁に使用した場合で、実に50年以上の耐久性があるといいます。
その表情は、じっくり眺めてみると、本当に豊かで、見ていて飽きることがありません。
一般的なサイディングや吹付塗装の外壁のように外観をこぎれいに戻すためのメンテナンスの塗装などは必要とされないことが嬉しいです。
御影石
日本で古くから、柱の下の礎石に使われてきた石。
モルタルのようにクラックから水を吸い上げる心配がありません。
外部で十分な耐久性があり、庭の植物とも調和する理想的な素材です。
長い時間の中で少しずつ擦り減って、角が丸みを帯びてくる風情がなんとも美しいです。
杉の厚板
杉は比較的安価に手に入る本物の自然素材。
魚でいうとサンマやイワシのような安くて美味しい材料です。
杉と一言で表現しても、木目や色も様々で、産地によっても特徴が異なりますが、
共通して言えることは、柔らかくて、温かみがあり、人にやさしいということです。
傷はつきやすいが、使い込まれた古足場板のように、長い時間の中でいつしか傷も気にならなくなります。
「傷は気にする必要がなくて、ただ大切に使い続ければよい」ということは、人生においても何か大切なことを教えられているような気がします。
栗板
栗は、時間がたてばたつほど味わいが増してくる不思議な材料です。
広葉樹なのに、とても柔らかい印象があります。
玄関の上り框など、頻繁に使う場所にぜひとも使いたいです。
愛着をよりいっそう高めてくれるに違いありません。
ヒノキ
ヒノキは
香りがよく、強く、とても清楚な美しさがあります。
コスト的にも、合板に突板を張ったような建材と比較して、はるかリーズナブルに感じています。
杉皮
杉皮は、外部において耐久性のある素材で、よく竹を押さえ縁として、塀の仕上げに使われています。
杉皮も、表情が様々で、見ていて飽きることのない美しさがあります。
私たちの事務所の外壁では、真鍮のチャンネルを押さえ縁として使いましたが、真鍮がくすんできて杉皮とよく調和しています。
土入り漆喰
木の美しさや石の美しさと本当に調和するのは、漆喰などの左官仕上げです。
また、漆喰は、表面の強度がある上、調湿性や抗ウィルス性がよくうたわれています。
わたしたちは、漆喰に少し柔らかさや微妙な色味を与えるため、土を混ぜたものをお勧めしています。
お金がないけれども時間があり、どうしても左官仕上げをしたいという方にはDIYの協力をします。
一人でも多くの人に、左官の良さを知ってもらいたいという気持ちがあります。
壁を塗っている時間は、無心になれます。
それは、とても贅沢な時間ではないかと思っています。
荒土と中塗り土
表面的な仕上げではなくて、厚みのある土壁は何物にも代えがたいと思っています。
理由をうまく説明することができないです。
サスティナビリティであったり、土が、地球の文明にとっていかに貴重なものであるかという観点からも何か言えるかもしれません。
それらはすべて後付けの理由で、土の存在感に心底惚れこんでいるというだけの話です。
素晴らしいことに、プレーンな中塗り土は、洋の東西を問わず、あらゆるものと調和します。
※分厚い土壁に関しては、コストと時間がとてもかかるため、クライアント自身が望んでいる場合以外はこちらから勧めません。
敷き瓦(共和建材)
だるま窯を用いた伝統的な製法によるもので、1枚1枚異なる表情を持っています。
黒御影石とのとりあわせも美しいです。