Concept
築30年ほどの和風の建売住宅のリノベーション。
30代の若い夫婦と2人姉妹の4人家族の新しい生活にフィットするように全面的にプランを変更しました。
プランの変更とあわせて構造改修と断熱改修を同時に行いました。ほぼ無断熱で隙間だらけの中古建売住宅を限られた予算の中で賢く性能向上させつつ、日々の生活の中で光の美しさや風の気持ちよさや、木の温もりが感じられ、時間の経過に耐え、ふところ深く家族を育んで行けるような家になっているのではないかと思います。
まず、構造に関しては耐力壁量をチェックし既存の筋交いの位置をみて必要な耐力要素をバランス良く追加して、耐震性を確保するようにしました。
同時にリーズナブルに温熱環境性能を改善するため、既存のアルミサッシは極力残しながら、ガラスのみをアタッチメント付のペアガラスに交換し、外気に面する壁、天井裏、床下には、新たに100mm厚のグラスウールを施工しました。
1階は面積的にタイトな条件であったこともあり、玄関からすぐにLDKと階段室が一緒になった1室空間に入るように計画しました。ここは、家族の生活にとって中心であり、街における広場のようなものとして考え、キッチンに立つお母さんが学校から帰ってきた子供の顔をすぐ見ることができ、自然とコミュニケーションが生まれやすいように計画しました。吹き抜け上部の北側に電動開閉のトップライトを設けたことで、夏場の風通しの良さを生むとともに、中にいる人は光の移ろいや外の天候の変化を感じ、夜空の星を眺めることができます。大きな吹き抜けを含む1室空間となるため冬場の寒さが心配されるリビング・ダイニングと、北側の冷えやすい脱衣室の床にはガス温水式の床暖房を採用しました。床暖房は足元から暖かくなるため、体感的にエアコンの設定温度を低くできる効果があります。また、吹き抜け部分に設けた天井扇も気流の効果で夏場のエアコンの利用を抑える効果があります。
2階のプランニングに関しては、今後の家族の変化に対応できるように共有スペースを大きくとりました。
建具は開け閉めの容易な引き戸とし、ローコストながら雰囲気のある古建具を上手に使いました。2階の床材は、無垢の杉のフローリングとしました。杉は傷つきやすいという欠点がありますが、柔らかく、体へのあたりが優しいところが小さな子供たちが遊ぶ上でも良いのではないかと思っています。