bar月読

bar Tsukuyomi

Concept

Bar月読の前のお店は、古い木造家屋の2階にあって、学校の校庭を見晴らすことができ、春には桜を味わうことのできる木製の大きめの窓があり、マスターがセレクトとした照明や什器やアンティークが調和した素晴らしい空間であったと想像されました。それに対して新しいお店は、マンションの1階の奥という⽴地で、コンクリート製の閉鎖空間でしたので、私たちにとって、以前からの月読のファンや独自の世界観を持つマスターの期待に応えられる空間を作ることができるかどうかというのはとてもやりがいのある挑戦でした。

月読という名前が示すように、月の美しさを味わうような感性を求められているように感じていました。月というのは改めて意識してみれば究極の造形物です。表面には無数のクレーターが様々な大きさにあり、私たちからの見え方も、刻々と変化しています。月はいつもあるけれど同じ見え方の月に出会うことはありません。おそらくこの「1 回限りという感覚」が「自然」ということではないかと考え、私たちはできるだけこの「自然」を生かすような仕上げを試みました。

それは例えば、曲がりくねった古材を利用したカウンターや、様々な塗り跡を示す砂漆喰に現れていると思います。お店の面積が広い上に壁や天井の遮音もする必要があって仕上げにまわすことのできるコストが限られていたため、木部の塗装や古材磨き、左官の仕上げは基本的にマスターと奥様と私たちがDIYでやる必要がありました。しかしそれらのことは結果的に見れば、マスターや私たちのお店への思い入れが強くなったという意味でもお店にとってプラスに働いたと思います。マスターが古材磨きにかけた労力を職人でまかなったとすると大変な金額になったのは間違いありません。Bar月読のカウンターの古材にはマスターの祈りがこもっています。

bar 月読
〒602-0873 京都市上京区伊勢屋町399 オーキッド山下1F奥
https://bartsukuyomi.wixsite.com/home