Concept
宇部の伝統的な木造住宅の改修
南側の庭に面した最も環境の良いスペースは、仏間として使われていて、生活の中心は北東の増築部分にありました。
そこは少々狭く、暗い印象があり今回の改修で広く明るくすることが望まれていました。
このような形式の家では庭に面した南側の一番良いスペースが普段使われないのはもったいないと日頃から感じていたのですが、今回のケースでは代々受け継がれてきた仏間の在り方を尊重した上で、仏間の隣に光と風が綺麗に流れる新しい生活の中心となる空間を接続し、家としての一体感を感じられるスペースを作ること目指しました。
と同時に、まず、この家が抱えていた根本的な問題を解決する必要がありました。
この家では40年ほど昔に北側の増築部分に、さらに2階部分を増築していて、2階直下の1階部分は耐力壁が不足し、構造的に弱点となっていました。
また、2階部分を増築したことにより母屋との間に複雑な谷の屋根形状が生まれ、
雨漏りの原因にもなっていました。
そこで今回改修するにあたり、2階を撤去した上で筋交いと火打ち梁をバランスよく追加して
構造的な弱点を解決すると同時に既存部分と調和するように平屋の屋根を作り直しました。
また、天井上には155mm厚の高性能グラスウールを、外壁内には105mm厚、床下に75mm厚のミラフォームラムダを設置して十分な断熱性能を確保しました。
伝統的な作りでは、垂れ壁によって光が遮られ、天井に光が廻らないため、部屋が暗い印象になってしまいます。今回は天井より上で、構造補強を施し、空間を分節していた垂れ壁を撤去しました。
また、光が天井にあたった時の空間への影響力を考えて、天井材は特に大切に考えました。
キッチンの直上にロールスクリーン付きのトップライトを設けたことにより劇的に明るくなり、日中は全く照明が必要ありません。
断熱材と共に分厚い無垢材でサンドイッチされた空間は、その材料が持つ調湿作用、木の香り、触れた時の優しさによって格別に心地良い空間なったように感じています。