山に寄り添う家

The house nestled against the mountain

Concept

山の斜面に近接した築50年の平屋の住宅の改修工事。
筆者の自邸。
改修前、特に山に隣接する部屋は、1年を通して山から下りてくる湿気の影響を受けてカビが発生し、私は頻繁にアレルギー性鼻炎に悩まされていました。
カビに悩まされないように環境改善するにはどうしたら良いかということが切実なテーマでした。
(株)エクセルギーハウスの黒岩さんにアドバイスをいただき、改修前に夏場の2週間ほど、建物周辺5カ所にデータロガーを設置して、それぞれの場所での温湿度の変化を把握したところ、山に面する北西側と比較して、日当たりの良い南東側は、明らかに絶対湿度の低い、より乾燥した空気となっていました。
そこで、南東側から選択的に風を取り入れ、山に面する側については反対にしっかりと気密性を高める計画としました。
また、あわせて建物周囲に湿気がこもらないようにするため、大きく2つの処置をしました。
一つは北側にあった、波板屋根の構造物を撤去し、北側に突き出ていた建物の一部を減築しました。
これによって建物の北側に、東からの乾燥した風がよりスムーズに導かれるようになりました。
さらに隣接する山の斜面が藪化していたため、風通しを良好にするために
「大地の再生」の考え方をとりいれた「風の草刈り」を福知山の増茂庭園設計さんの指導の下、ワークショップ形式で行いました。
そのおかげで山の斜面に継続して人が入るためのスペースを確保され、山の斜面は私たちの生活空間の一部となりました。
藪化していた山の斜面は、徐々に植物の多様性を増し、健やかな環境に変化していっております。
室内においては、特に暗い部分には、ガラス瓦を利用したトップライトを設け、天井扇をまわすことによって、
紫外線による殺菌効果と空気の動きによって、よりカビが発生しにくい環境としました。
また、この天井扇によって、冬場、東側のリビングに設けた薪ストーブによって暖められた空気が、ロフト状に断熱区画された小屋裏を通して、西側の山に面する部屋に送りこまれます。
これによって薪ストーブ一台で家全体が暖められ、隅々まで結露が防止される計画が実現しました。